私たちは日々、様々な「当たり前」の中で生きています。「こうあるべきだ」「こうするのが普通だ」といった考えは、社会や文化、家族といった環境の中で自然と身についていくものです。しかし、心の健康を保ち、より自分らしく生きるためには、時にこの「当たり前」を立ち止まって問い直す勇気が非常に大切になります。

「当たり前」が私たちを縛る時

カウンセリングの現場でよく耳にするのは、「みんながそうしているから」「親がそう言ったから」「常識的に考えて」といった言葉です。これらは、無意識のうちに私たちの行動や思考を制限し、時に大きなストレスや生きづらさを生み出す原因となります。

たとえば、「良い母親は常に笑顔でいるべきだ」という「当たり前」に縛られ、感情を抑え込んでしまうお母さん。「男性は弱音を吐くべきではない」という「当たり前」から、誰にも悩みを打ち明けられずに苦しむ男性。これらは、個人の感情や多様性を無視し、私たちを型にはめようとする「当たり前」の典型例です。

あなたの「当たり前」は本当に「当たり前」ですか？

では、どうすればこの「当たり前」を問い直すことができるのでしょうか？

1. 自分の感情に耳を傾ける

「こうしなきゃいけない」と思ったとき、心の中ではどんな感情が湧いていますか？ 違和感、苦しさ、もやもやとした気持ち…。それらの感情は、「あなたの当たり前」があなた自身にフィットしていないサインかもしれません。

2. 異なる視点を探す

世の中には、様々な価値観や生き方があります。自分の「当たり前」とは異なる考え方に触れることで、視野が広がり、凝り固まった思考がほぐれることがあります。本を読んだり、多様な人と話をしたり、新しい環境に身を置くことも有効です。

3. 「なぜ？」を繰り返す

「なぜ、私はこう思っているのだろう？」「なぜ、これは当たり前なのだろう？」と、自分自身に問いかけてみてください。その「当たり前」が、本当にあなた自身の考えに基づいているのか、それとも単に外部からの刷り込みなのかが見えてくることがあります。

4. 小さなことから試してみる

いきなり大きな変化を起こす必要はありません。たとえば、「いつもこうしているから」という理由で選んでいたものを、あえて違うものにしてみる。普段なら口に出さない意見を、勇気を出して言ってみる。そうした小さな「当たり前」への挑戦が、徐々に心の自由を広げてくれます。

心の自由がもたらすもの

「当たり前」を疑い、自分にとって本当に必要なもの、心地よいものを選ぶことは、自己理解を深め、自分軸で生きることに繋がります。それは、他者の評価に振り回されることなく、自分自身の価値を認め、ありのままの自分を受け入れる第一歩となるでしょう。

もし今、あなたが何かの「当たり前」に息苦しさを感じているなら、一度立ち止まってその「当たり前」を問い直してみませんか？ あなたの心が本当に望む選択は、案外シンプルなところにあるのかもしれません。

このコラムが、あなたが自身の「当たり前」を見つめ直し、心の自由を手に入れるための一助となれば幸いです。何か心に引っかかることがあれば、いつでもご相談くださいね。